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キャラクター名 涼宮ホノレヒPスキル:★★愛情 :★★★厨房度 :★★★ ref ランカークラス Class C キルクラス Class C デッド数 D 所属部隊名 朝餉 名言 勝ち馬属性 ★ 戦闘スタイル 主戦場メイン 総評 本人への要望 野良援軍でやってくれ 朝餉所属の両手オリ。無エンチャで前線に居ることが多い。 スタンには基本ドラテ。たまにスカウトになったりする。
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涼原或(すずはらある) (女)性別 (中3)学年 属性【ヤンデレ】 誕生日(あれば) 身長(148㎝) 性格() 好き(飴・飴をくれる人・本・睡眠) 嫌い() 特技() 部活(帰宅) 一人称:私 二人称:××さん、(懐くと)呼び捨て 「…見てるよ?ずっと。」 「飴くれるの?」 「部活?帰宅部ですが」 トップページ
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「3年前とはどういうことだ」 「目的は朝比奈みくるを連れ戻しに行く。それを実行した後涼宮ハルヒのところに行く。」 なるほどおんぶしていた朝比奈さんをか、待てよそんなことをして歴史は変わらないのか。 「歴史の変化に影響はないのか?」 「仕方ないこと。」 「この状況ですからね。」 久しぶりにしゃべったな古泉。 「善は急げだ、早く行こうぜ。」 「急がばまわれともいいますが…」 お前は黙っていろ。「行くぞ長門、古泉。」 「了解した。」 「わかりました。」 でもどうやっていけばいいのか? 「心配ない。つかまって。」 そういって俺と古泉は長門につかまった。するとものすごいめまいがした。少しの間気を失った。 「お目覚めですか?」 「ここはどこだ。もう3年前なのか?」 「そうなりますね」 「長門はどうした?」 「朝比奈さんを連れ戻しに行きましたよ。」 「そうか、暇だな。」 「オセロでもしますか?」 こいつは馬鹿なのか。 「それとも人生ゲームがよかったですか?」 「そういう問題ではない。」 「そうですか残念です。」 雑談をしてると長門が戻ってきた。朝比奈さんを連れて。 「長門、これで3つ目の鍵がそろったのか?」 「揃った。残すは、涼宮ハルヒのみ」 やっとここまで来たか。長い道のりだったぜ。 「それで長門、ハルヒはどこにいるんだ?」 「彼女の閉鎖空間にいると思われる。」 「どういうことだ」 「そのことについては僕が説明します。つまり、涼宮さんの願いが詰まった空間に僕と行ってもらいます。 そして涼宮さんをこの世界に連れ戻してきていただきます。そして5人が揃うとすべてが元通りになるはずです。」 「詳しいことは分かった。早く行くぞ。」 「了解しました。それではこちらに。」 「おう。長門、朝比奈さん待っててくださいね。ハルヒを連れてきます。」 すると長門が俺にささやいた。 「気をつけて。急進派はこれから何か攻撃を仕掛けてくると思われる。だから、これを持ってて。」 そういって長門は俺にライフルを渡してきた。 「玉の先に再修正プログラムが自動的に起動する薬品を塗っておいた。だから、心配しないで。」 それは、心強いが「再修正プログラムって何だ?」 「再修正プログラムが起動されると、急進派の動きが止まり、情報連結が解除される。」 「分かったよ。やれるだけやってみるよ。」 「あなたに賭ける。」 いつの日か聞いた言葉だな。 「そろそろ時間です。行きましょう。」 分かったよ。 閉鎖空間に向かう途中で古泉が、「僕の腕の魅せ所ですね。」 「お前にも頑張ってもらわんとな。」 「そうですね、SOS団副団長の古泉一樹ですからね。」 そういった古泉はなんだか少しかっこよかった。ちなみに俺は、ホモではないぞ。 「まあ頑張ろうぜ。」 「全力を尽くします。」 そういった俺らの前にある人物が行く手を遮るように立っていた… お前は! 「キョン君久しぶり、元気だった?」 朝倉涼子だ。あのときを思い出すぜ。クソ。 「お前が最初の敵か?」 「そうなるわね。早速行くわよ。」 そういって朝倉はナイフを俺に向けて投げてきた。 「危ねぇじゃないか。」 「そういう風にしたもん。」 クソ忌々しい、仕方ないあれを出すか。 そういって俺はライフルを出した。 「ついに使いますか。」 「仕方ないだろ、この状況だ。」 すると朝倉が「何その物騒なものは?」 「この玉がお前に当たるとお前は情報連結を解除される。」 「そっか、でも私にそんなの関係ない。」 そういって朝倉は、俺に向かって来た。関係ないとはどういうことなんだよ長門。 仕方ない俺もこんなとこで死ぬわけには行かない。 バーーーーーーーーーーーーーン そういって俺は引き金を引いた。 3章につづく
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涼州関係資料 ★採集場所★ -鉱石採集- 座標 場所 採集物 採集量/1BP 4-15 鉄鉱石・石灰石 5-7 五色砂・琥珀 6-11 煤炭・金剛石の原石 6-12 銀鉱石・琥珀・金鉱石 7-6 煤炭・金鉱石 8-4 煤炭・金剛石の原石 9-11 鉄鉱石・石灰石 10-8 銀鉱石・琥珀・金鉱石 11-4 五色砂・琥珀 14-5 煤炭・金剛石の原石 -木材採集- 座標 場所 採集物 採集量/1BP -薬草採集- 座標 場所 採集物 採集量/1BP -発掘- 座標 場所 採集物 採集量/1BP 3-13 鱗片:黒羽:白玉 30:30:15 4-7 珍獣皮:霊石片 26~33:40~45 5-11 上質獣皮:巨獣牙 39~48:10~16 6-2 上質毛皮:緑玉原 27~31:13~14 7-10 珍獣皮:緑玉原石 27~32:12~16 8-14 鱗片:黒羽:白玉 30:30:15 10-13 上質毛皮:緑玉原石 27~31:13~14 11-2 珍獣皮:霊石片 26~33:40~45 13-5 上質獣皮:巨獣牙 39~48:10~16 ★MOBデータ★ 名前 Lv 場所 経験値 お金 アイテム 涼州ヘビ 42 12-7 荒砂鷲 43~44 12-7・5-10 荒砂サソリ 42 12-7 馬襲い狼 43 8-8 赤砂ヘビ 44 8-8 発光核・滋養獣肉 砂屍狼 42 8-8 大砂クモ 44 6-10 涼州サソリ 42 6-10 流砂サソリ 42 5-10 西風団手下 40 5-8・8-6 赤鉄鉱石・軍用茶・砂竹簡 董卓軍精兵 40~41 5-16 西域の材木・砂竹簡 董卓軍重兵 40~41 5-16 董卓軍弓兵精鋭 40~41 5-16 砂地獄 44 10-7 蜘蛛糸・西域の材木・軍用漢方材・砂竹簡 砂嵐サソリ 43 10-7 発光核
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【涼宮ハルヒ@こなたとハルヒの第二次世界大戦】 大日本帝国の国家元首にして、すべての元凶(のうちの一人)。 SOS団による世界征服を成し遂げるため、各国に存在する異世界のハルヒと戦いを繰り広げる。 ちなみにタイトルに名前が入ってはいるが、基本的に物語はこなた達の視点で進むため意外に出番は少ない。
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「では、今日は新入部生、仮入部生に、お茶点て体験を、してもらおうと、思います」 穏和そうな部長さんが、着物を身に着けて、言う。 そう、今日はようやくお茶点てができる日。 それは、部員募集のポスターにも書いてあったことで、 ずるい人なら、今日だけ仮入部ということもあるだろうけど、 一人だけ、はっきりと今日だけと分かる人がいる。 涼宮ハルヒ 話によると、いろんなところに仮入部して、どこも1日でやめてるらしい。 しかも、どこも完璧にこなして、運動部だと間違いなく、入部を薦められているとのこと。 この部活も例外ではないと思う。 特に、今回の場合、他にも誰か今日だけの人がいるだろうし。 ちなみに、あたしはこないだ入部して、袱紗さばきの基本やらを教えてもらっていたのだが、 お茶点ては初めての体験。うまくできたらいいんだけどね。 「では、まずは二人一組になって、互いに向かい合って座ってください」 と、部長さん。 ということは、相手を探さないといけないわけなんだけど・・・ ほかの人はみんなは友だちをつれてきているらしく、まあその人たちはほとんど今日だけの仮入部なんだろうと思いながら、 結局、あたしは必然的に涼宮さんと組むことになった。 「では、まずは挨拶から」 仕方ない、やろう。 ある意味、おとなしい子だから、そういう風に考えたら、いい子とあたったのかもしれない。 「大野木です。よろしくお願いします」 「………」 「………」 「………」 「あの、挨拶は?」 「よろしく」 ・・・そんな、変換したら夜露死苦ってなりそうな言い方しないでよ。 「まずは西側の人がお茶点てをします」 ちなみに、あたしが座ってるのが西。涼宮さんが東。 茶碗がそれぞれにまわされる。それと、お茶の粉と茶せん。 どうやら、これだけのよう。 そこで、いったんあたしは回りを見回してみた。 どうやら、残念がってる人もいるよう。 茶菓子もあるのかと思ったんだろう。 ・・・あたしもだけど。 「では、まずはわたくし達がお手本をやらせていただきますので、それを見て、同じようにやってください」 そう言って、部長と副部長が見本を見せてくれる。 はっきり言って、真剣なまなざしで見てる人はほとんどいない。 あっ!あそこの人、足痺れだした。 ところで、涼宮さんはちゃんとマジメ・・・かどうかは分かんないけど、部長さんのお手本を見ているみたい。 あたしは、昨日までに部長さんにある程度のやり方は教わったから、今は見てないけどね。 いや、でも一応見ておいたほうがいいかな。 「では、どうぞ」 さて、ようやくお茶点てができる。 あたしは、昨日までに部長から教わった、お茶点てのやり方を丁寧にやっていく。 自分で、味が分からないのがつらいけど、まあいいや、後で涼宮さんに感想を聞こう。 「どうぞ」 涼宮さんにお茶を渡す。涼宮さんはゆっくりその茶碗を手にとって・・・ 音もたてずに飲んでくれた。 うまい! 無愛想な顔さえしてなければ、立派な日本女だよ。 涼宮さんが、茶碗を床に置く。 あれ?まだお茶残ってるよ。 まあいいや、とりあえず、 「どうだった?」 「……」 「……」 「……」 また無言か。 何か言ってよ、本当に。 「まあまあじゃない」 ・・・今の無言は言うことを考えてくれたのかな? まあいっか、感想はもらえたし。 いまいち、うれしくない感想だけど。 この子の性格から考えて、褒め言葉と受け止めてもいいだろう。 「続いて、東側」 どうせなら、相撲みたいに「ひがーしー」と言ってくれたら面白いのにな、と思いながら。 あたしは、涼宮さんがお茶点てをやっているのを見る。 飲み方もうまかったけど、お茶点てもうまい! もしかして、やったことあるんじゃないの?って思うぐらい。 「……」 無言でお茶を渡される。 あたしは先ほどの涼宮さんと同じようにお茶を飲む。 ん! 「おいしい」 思わず声がでてしまうほどおいしい! いや、別に出たらダメっていうわけじゃないんだけど。 でも、せっかく褒めたのに涼宮さんは無反応。 もっと感情豊かにならないもんかなー? あなたかわいいんだから、もっと素直に喜んで。 「さて、今日はこれにて終わりとさせていただきます。みなさん、どうも今回はお忙しいところ、ご参加くださいまして、ありがとうございました」 部長さんが終わりの合図を言った。 部長さん、忙しかったら今日だけの仮入部の人がこんなところ来ません。 むしろ、皮肉に聞こえますよ。 もしかしたら、本当にそのつもりなのかもしれないけど。 そして、仮入部の人(もちろん、涼宮さんも含む)は帰っていった。 さて、今からは片づけだ。 と思ったんだけど、その前にあたしがさっき作ったお茶が入った茶碗があることに気づく。 もしかしたら、涼宮さんは、自分で味を確かめたほうがいいと思って、残してくれたのかな? そう考えておこう。なかなかいい人じゃん。 さて、じゃあ自分の実力を確認してみることにしますか。 と、その時、部室のドアがノックされ、そこからあたしの友だちの阪中が入ってきた。 「おっ!迎えに来てくれたの?ちょっと待って。今、片付け中だから」 あたしは阪中を見て言う。 でも、なんか阪中の目線があたしに向いていないような気がするんだけど・・・ 「涼宮さん、ここに来たよね?」 阪中がそんなことを聞いてきた。 確かに来たけど、そんなこと聞いてどうするの? 「うん。あたしとペアだったよ」 「じゃ、じゃ、じゃあ、そのお茶は涼宮さんが作ったのね?」 と、あたしが今持っている茶碗を指差して言う。 「いや、これはあたしが作ったので、涼宮さんが半分残してくれたから、今から飲もうとしてたとこ」 「そ・・・そ、それ本当なのね?」 「うん」 何か、目の色が変わったような気がするけど、気のせいということにしておこう。 ってか、さっきからずっと目線が茶碗なんだけど、そんなにあたしが作った茶が飲みたいのか? 「飲む?」 そう言うと、阪中は犬のように首を縦にふりだした。 あんたが犬が好きなのは知ってるけど、犬にならなくてもいいよ。 そして、あたしが茶碗を渡そうとすると、すばやく阪中は茶碗をとった。 そんなに早く飲みたいか? とは思ったんだけど、口元まで茶碗を近づけて、その後は震えたまま止まっている。 「あの、阪中。今はそんな上品に飲まなくてもいいよ。別にあんた茶道部じゃないんだし」 「分かってるけど、緊張するのね」 そんなことで緊張しなくても・・・ と思っていると、まるで勇気をだしてまずいものを飲むように、いっきに中身を飲んだ。 ・・・・・・・ もう飲み終わったと思うんだけど、いつまで茶碗に口をつけてるの? と思った数秒後、ようやく阪中は茶碗から口を離した。 「おいしいのね」 「そう、ありがとう」 その後、阪中はすっごい幸せそうな顔になった。 それだけ、幸せそうな顔になってくれたら作ったこっちもうれしいよ。 今度、自分で自分のを飲んでみよ。
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SOS団 キョン INFP 涼宮 ハルヒ ENFP 朝比奈 みくる ISFJ 長門 有希 ISTJ 長門 有希(消失) INFP 古泉 一樹 INTP SOS団の関係者 谷口 ESFP 国木田 ISFJ 朝倉 涼子 ENTJ 鶴屋さん ESTP キョンの妹 ENFP
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まだまだ寒さが残っているがもう菜の花が芽吹く季節になった。 1年程前に結成されたSOS団は右往左往ありながらも無事に続いている。 最近思うのだが何かがおかしい気がする。何がおかしいのか、と聞かれると 俺も困るのだが変なもんは変としか言いようがない。 宇宙人や未来人、超能力者が普通に出入りしているだけで十分変なのだが まぁ、それは置いておこう。そんなこといいだしたらキリがないしな。 こんなことを考えてたのも一瞬でもはや生活習慣の一部になりつつある SOS団のアジト、文芸部室へと足をはこんでいた。 ノックをすると可愛らしい声で返事が返ってきた「あっ、はぁい」 今日も似合い過ぎのメイド服を着た朝比奈さんはにこやかに微笑んで 音を立てているヤカンへと駆け寄っていった。 俺は部室を見まわした。 いつものさわやかな微笑みをうかべた古泉とこれまたいつもの無表情で ハードカバーを読みふけっている長門がいた。 「どうも。涼宮さんは一緒じゃないんですか?」 古泉はチェス盤とコマを用意しながら言った。1回も勝ったことないのに こいつもよくあきないな。 あいつは掃除当番だと言い俺は既に指定席になりつつあるパイプイスに 腰をおろした。 そんないつもの日常に俺は安心しきっていた。 まさかこんなことになるなんてな・・・。 俺は朝比奈さんの煎れてくれたお茶に今世紀最大の幸せを感じつつ 進級テストについて考えていると「どうしましたか?」 古泉が声をかけてきた。 「ちょっと将来のことを考えて暗澹たる気分にひたってたんだよ」 「いやぁ、あなたがそんな顔をしているのが珍しくて恋でもしてる んじゃないかと思いましてね」 それはない。絶対にない。 古泉のクスクス笑いを無視しつつあいつ遅いなぁなんて考えていた。 あいつと言うのはわれらが団長、涼宮ハルヒのことだ。 「涼宮さん遅いですねぇ・・・。」 俺と同じことを考えていたのは俺の天使朝比奈さんだ。 どっからみても中学生か小学生の高学年にしか見えないのだが 実は俺より年上らしい。 まぁ、実年齢は禁則事項♪らしいので本当のところは 知らないが・・・。朝比奈さんが何歳かなんて問題は置いておこう。 最近感じていた違和感も忘れ退屈な日常を過ごしていた。 ただ、今日は何かがおかしかった。 何故なのだろう。ハルヒが部室にこなかった。 次の日俺が心臓破りの坂(命名俺)をのぼっていると後からやかましい 男が歌いながら近寄ってきた。 「WAWAWA忘れ物~っとキョン今日もしけた顔してんなぁ」 お前ほどじゃないよと言いつつ俺は冷たい手に息を吹きかけた。 「それより谷口チャックが開いてるがそれはファッションか?」 「なっ、ありがとな。このままだと変態扱いされるとこだったぜ」 元から変態だろ。 「お前程じゃないぜなんせキョンなんてあだ名で呼ばれるなんて 俺は死んでも無理だ」 うるさい。俺も好きで呼ばれてるわけじゃないんだぞ。 なんて無駄なやりとりをしている間に学校についた。 教室にはいると俺の後ろの席には誰もいなかった。 いつもは俺より早く来ているんだがな・・・。 まぁ心配するだけ無駄だな。前にも遅かったことあったしな。 だが、ハルヒはこなかった。担任の岡部に聞いても連絡はきてない としか言わない。 ハルヒのことが気がかりで授業なんて聞いていられない。 理科の教師が谷口にチョークを投げつけて「おい!谷口!チャック を開けるな!」と言ってたのも聞き流す。 そして4時限目の終了を告げるチャイムが鳴るやいなや俺は部室棟へ 向かった。もしかしたらハルヒはここに泊まってるんじゃないだろうな なぁんてありえもしない事を考えながら、文芸室の扉をノックした。 「だっだれ!?」・・・ハルヒの声だ 「俺だ。それより教室にもこないでここで何してる」 ガチャガチャ・・・鍵閉めてやがる。 「キョン?何かよう?用がないなら帰ってよね」 「いや用があるわけじゃないんだがちょっと心配になってな」 「えっ・・・」 そこでハルヒは鍵を開けて顔を出してきた。 目が赤く少し腫れている。何かあったのか? とたずねると。 「ちょっと親父と喧嘩しちゃってさぁ・・・それで家出してきたの!」 やれやれ。それはいつだ? 「昨日の夜よ?」「ってことは何か?お前は昨日の夜からここにいたのか?」 「そうよ」そこで俺は言葉を失ったね。 ハルヒは笑っている顔を作っているのだが下手っぴすぎる。 笑顔の目の端の方、涙が滲んでいる。 残念ながら俺はそんな顔をしている女性にかける言葉は知らないから お前にかけてやる言葉はないぞ?古泉あたりならかまってくれるかも しれんが。 そのまま沈黙を保っているとハルヒが 「しばらく授業にはでないわ。あと、SOS団は休m」 「ちょっとまった。」 俺はハルヒの言葉を聞き終える前に言った。 「理由はわからんが、とりあえず親父さんも反省してるはずだし 心配もしてるはずだ。だから帰ってやれよ」 「なっ・・・」 何故だかハルヒは悲しそうな表情を作って 「・・・やだ」 泣きながら拗ねている子供のように言った。 やだって・・・。 「キョンの家いってもいい?」 俺が何を言おうか迷っているとハルヒが何を血迷ったか 俺の家に行きたいなんて言っていた。 「あぁ、家に帰るのは夜でもいいが親御さんにあんまり心配 かけんなよ」 「遊びにじゃなくて・・・しばらく泊めなさいよ」 今にも泣き出しそうにしてるハルヒに俺はダメだ・・・とは言えなかった。 それから俺は、他のSOS団メンバーに今日は部室にこなくてもいいと 伝えて俺は魔の坂(命名俺)をハルヒと2人で下っていった。 その間に会話はなかった。沈黙。 そのまま沈黙を保ちつつ家に帰ると妹が 「ハルにゃん!どうしたのぉ?キョン君ハルにゃん泣かしたの? うわぁ~。わ~るいんだわ~るいんだ」 そんな幼稚なことを言っていたがとりあえず無視しておいた。 そして事情をおふくろに説明すると 「ハルヒちゃんなら大歓迎よ。いつまででも泊まっていきなさい。」 「はい!ありがとうございます」おいおい・・・。本当に 何年間も泊まったらどうするんだ?まぁ、困るのは俺だけのようだが。 俺は妹+おふくろの行末を案じつつハルヒと一緒に俺の部屋に向かった。 その間ハルヒは小さく「ごめんね・・・」と呟いたのだが 聞こえない振りをしておく。人間できてるなぁ俺って。 部屋につくなりハルヒの元気は再活動をはじめやがった。 「ねぇキョン!今日の晩御飯は?あと、お風呂にも入りたいんだけど!」 やれやれ、と何度も封印しようと思った語を口にする。 こんな状況でもハルヒは元気な方がいいな。うん。 「風呂は沸いてるから好きにつかえ。晩飯は寿司の出前とるそうだ」 「わかったわ!じゃぁご飯食べてすぐお風呂つかわせてもらうね」 好きにしろ。 俺は3人分くらいの寿司を皿にのせて自室へと運んだ。 さすがのハルヒでも他人の家族の中にはいっていくのは抵抗があるかも 知れないと俺は考えたからだ。 部屋に入ると「遅い!」何て我がままなお客さんだ。 ほらよ。皿を渡して居間に戻ろうとすると 「ぇ?一緒に食べないの・・・」 「戻ろうと思ったが腹が減って動けねぇ。こっちで食べてくかな」 我ながらこれはひどい。 ハルヒは安堵したように吐息をもらした。 「いただきま~す!」 「いただきますっと」 ハルヒは大きく口を開けて寿司を放り込んだ。 うぉ。何故かハルヒが泣きながらバタバタと暴れだした。どうしたんだこいつ? 「キョンお茶!はやくっ!」 どうやら山葵が鼻にきただけらしい。 「バカキョン!遅いわよ!」 持ってきた緑茶を1瞬で飲み干してあろうことか俺の分まで飲みやがった。 それから30分もしないで寿司は空になりハルヒは風呂へ。俺は妹の宿題をやらされていた。 こんなの小学校でならったっけ?俺は習ってないぞ? と独り言をもらしつつ最終ページにある答えを解答欄に書き写した。 そんな作業を5教科分終わらせた頃に妹が俺を呼びに来た。 「ハルにゃんお風呂にいるんだけどぉキョン君呼んできてぇって言ってるの。 あっ、宿題終わったんだぁ。ありがとね」テヘっと舌を出してシャミセンをどこかに つれていった。さらばシャミセン。 しかし風呂で用があるって・・・なんだ?背中あらえとか頭洗えとかだったら 速攻で拒否してやる。理由?俺だって健全な高校生だからだ。 風呂場についた。うちの風呂は曇りガラスのドアなので中は見えることはないが それでも少し変な妄想をしてしまう。あぁくそ。あいてはハルヒだぞ? そんなことを考えつつ俺はドアをノック。 「・・・キョン?」少しこもって聞こえるのは風呂場に声が反射しているのだろう。 「ああ、んで何だ?用ってのは?」 「・・・がないの」ん?なんだって? 「着替えがないの!急に家を飛び出してきたんだもん・・・」 「俺か妹の服でよければ貸すが・・・妹のは無理そうだな」 「まぁ、仕方ないわ。あんたので我慢する」 俺はとりあえず自室に戻りTシャツとハーフパンツを手に取ったが そこで気がついた。下着がないな・・・。残念ながら俺はそういう趣味は ないから女物の下着なんて持ってないんだ。ほっ、本当だぞ? そんな事を考えながらもう一度風呂場へ。 「なぁ。Tシャツとハーフパンツは持ってきたんだが下着はどうするんだ?」 「あっ、考えてなかった・・・。」 やっぱりな。 その後の会話は思い出したくない。 俺が必死にチャリを漕いでいる理由と相違ない。 「キョン・・・下着だけでいいから買ってきなさいよ!」 「何で俺が?」 「だって裸で外出たらつかまっちゃうでしょ」 それはそうだが・・・。それでも俺が女性物の下着を買いに行くのは忍びない。 妹にいかせろと言ったらハルヒは 「妹ちゃんはキャラ物とか買ってきそうで危険そうだもん」 それにコンビニでいいからさとハルヒは付け足し制服のポケットから1000円札を 俺に渡した。「風邪ひいちゃうから速攻で買ってきてね。3秒以内で!」 おいおい3秒って・・・。それでも風邪なんかひかれたら目覚めが悪いので 俺はチャリを漕ぎ続けている。立ち漕ぎダッシュだ。 コンビニの前で急ドリフト。キレイに停めてコンビニへと入っていく。 織物が置いてあるコーナーの横に女性物の下着が売っていた。 色とか大きさは知らないので一番端にあった白いのを手に取った。 そしてレジへ・・・。今までにないドキドキと緊張感。やれやれ。 これは何プレイだ。店員は「738円です」と平坦な声で言ってくれた。 店員は40代くらいのおばさんだ。若い人だったらきつかったな。 ハルヒに渡された1000円札を店員に渡しておつりを貰うまでの時間が かなり長く感じた。まぁ、実際数秒しかたってないんだがな。 それから走ってチャリに向かい、急いでチャリを漕いだ。 行きよりも早いと思われるスピードで家に着いた。 息は切れ切れだ。だが待ってもいられないのでハルヒの待つ風呂場へ。 バスタオルを巻いたハルヒが立っていた。 「遅いわよキョン!すっごい寒かった!」 やれやれ。俺の超マッハダッシュ(命名俺)でも遅いというなら どんな速度ならお前の速いに該当するんだ? 「・・・って」「ん?」「・・・・てけ」 「ああ?」「服きるからでてけ~!」 ハルヒがそう叫んだときこう・・・バスタオルが ハラリっていうかフワっていうかそんな感じにハルヒの体 から剥がれ落ちた。目の前にはハルヒが生まれたままの姿で・・・。 お互いに違う理由で沈黙した。っていうか俺は気を失っていた。 「・・・ッン?・・・キョン?」 ハルヒの声が聞こえる。だが一度寝た俺はそう簡単には起きないぞ? 「このバカキョンっ!団長様の命令に逆らう気?死刑よ死刑。絞首刑!」 目が半開きの状態で真上を見るとハルヒが涙目で俺を殴り起こしていた姿 が目に入った。 サイズが合わなくてブカブカのTシャツ(俺の)とハーフパンツ(これも俺の) を着ているハルヒ・・・下から見ると色々と丸見えだぞ? 「あぁ・・・。なんか見てはいけない物を見てしまった気が・・・」 そう言うとハルヒが顔を真っ赤にして俺の襟を掴んできた。 「記憶から抹消しなさい!宇宙人と契約して!アブダクショーンって呼ぶのよ」 やれやれ。無茶言うなよな。もしアブダクションで長門や朝倉なんかが来たらどうすんだ 長門はいいが朝倉にはトラウマがある。しかももう立ち直れないくらいのな。 ハルヒはそのあともギャーギャーと騒ぎ立てていたが、心配して妹が来たあたりで 「まぁいいわ。不可抗力だったし」わかってんならこんなことするなよな。 やれやれ。まぁこれで大きな問題は解決だ。 「お風呂入ったから何か眠い・・・」 子供の用に両手で目をこするハルヒはすごくかわい・・・何考えてるんだ俺 相手はハルヒだぞ?(本日2回目) 「ああ。じゃぁ妹の部屋にでも布団ひいてやる。」 「何言ってるのよぉ・・・あんたのベット使わせて貰うわぁ・・・」 もう寝そうだ。まだ9時だぞ?俺の妹でさえまだ寝てない・・・ ってこいつ今何ていった?俺のベットで寝るって・・・俺はどこで寝ればいいんだ? 「下に布団ひけばぁ・・・。それとも一緒にねるぅ?」 眠気に負けて投げやりだ。 「んじゃぁ下に布団ひかせてもらうな」「うぅん・・・」 ハルヒは覚束ない足取りで俺の部屋へと向かった。 俺もその後ろを追って自室へとむかった。 部屋に入るやいなやハルヒは俺の枕へ顔を埋めた。使ってもいいが 涎はつけるなよと言い残し俺はさっさと布団をしいた。 まだ眠くなる時間でもなかったので長門から借りていた 【宇宙の原生物】とかタイトルのハードカーバーを広げた。 ハルヒが電気をつけるなとかうるさいのでスタンドライトを使って文字をたどった。 そうして何時間たったんだろうな。本に熱中してしまうと時間の経過が わからなくなる。1人の少女が上から降ってきた。 ここで言う少女は紛れもなくハルヒの事で上と言うのはベットのことだ。 結構派手に落ちたのだが俺がクッション代わりになったらしい。 どうりで腹が今までにないくらい痛いわけだ。 「おい、ハルヒ。起きろーおーい・・・だめか」 そのまま読書を続ける気にもなれずハルヒを起こそうとした。 声をかけても反応が無いので体をゆすってみた。 すると寝ていて力の入っていない体は俺の真横に・・・。 我ながらこれは失敗だったな。俺の顔面とわずか15cmくらいの所に ハルヒの顔が!?理性のタガが外れそうになったが相手はハルヒ相手はハルヒ と呟いてどうにか自分を押さえ込んだ。 とりあえず現状をどうにかしないとな・・・。 と、考えている時にハルヒの目から涙が溢れていた。 「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」 家族の夢でもみているのだろ。 泣いているハルヒをこのままほおって置くのも何なので体の動くまま 起こさないように弱い力で抱きしめてやった。 明日俺の体が五体不満足になっていても知ったことか。何故かおれはこうしなきゃ いけない気がした。気のせいかも知れないが。
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百物語というものをご存知だろうか。 一人ずつ怪談を話し蝋燭を消していき、100話目が終わった後に何かが…!!というあれである。 俺は今まさになぜか部室でハルヒと愉快な仲間たちとともにそれをしているわけだが、何故そのような状態 に至ったのかを説明するには今から数時間ほど遡らなければならない。 ______ 夏休み真っ盛りのその日、俺はそろそろ沈もうかという太陽の暑さを呪いながらニュースを見ていた。 東北の某都市ではいまごろ七夕祭りをするのだなあ、などといつかのことを思い出しながら今まさに瞼の 重量MAXに至らんとしたその時、携帯が盛大にダースベーダーの曲を奏でた。 ハルヒだ。 市販されているどのカフェイン飲料よりも効く恐怖の音色によって冴えた頭で出ようか出まいか一瞬迷った後、 恐る恐る携帯を手にした。 「あ、もしもし?キョン今暇?」 恐ろしく不躾な第一声、間違いなくハルヒである。 いーや、今まさに夏休みの課題に取り組もうと今年一番のやる気を出していたところだぜ。 マシンガンに対し襖の盾を構える様に、ささやかな抵抗を試みる。 「ちょうどいいわ、そんなのやめて駅前に集合!」 何が調度いいのだろう、などと問うのは風呂上りに鏡の前でポーズをとるよりも時間の無駄というもんだ。 相手はハルヒなのだから。 駅前に着くと、時をかける美少女こと朝比奈さんが小さく手を振って俺を迎えてくれた。 「あ、キョン君、こんばんは…!」 純白のワンピースに可愛らしいポーチ、なんという麗しのお姿、もしかしてあなた未来人じゃなくて 天使か何かなんじゃないですか? 「私突然呼ばれて…キョン君は何するか聞いていますか?」 あいつが突然じゃないことなんてないんですよ、朝比奈さん。 ついでに言うとあいつの頭の中に何か計画があるのかも怪しいもんだ。 「ヤッホー!」 話題の主が何故か胡散臭い笑顔と鉄仮面を引き連れてやってきた。 「いやあ、涼宮さんと長門さんと電車で一緒になったもので。」 お前には聞いてないけどな。夏休みの、しかもこんな暗くなるような時間から何しようってんだ、ハルヒ。 「うんうん、みんな行動が迅速でとても良いことだわ。SOS団の未来も明るいってものよ!」 聴いてないな。 「失礼ね、ちゃんと聴いてるわよ。これからみんなで百物語をやります!」 帰っていいか。 「夏といえば怖い話。怖い話といえば百物語。百物語といえば学校よ。そういうわけで今から部室に行って 納涼百物語大会を行います。」 朝比奈さんは既に怯える準備万端、古泉はいつもどおりのインチキ笑顔、長門は幽霊のように冷たい無表情でハルヒを見つめていた。 意外と長門は読書で得たネタがあるかもしれないなと考えそうになったが、つっこみ担当の脳内俺がそれを遮った。 ちょっと待て、こんな時間に学校に忍び込んだのが見付かれば、バニーガールの時よろしくまた何を言われるか… 「大丈夫、ちゃんと昼間のうちに部室の窓の鍵は開けておいたわ。窓から縄梯子を垂らして、蝋燭も用意しておいたから完璧よ。」 どこからそんなもんを調達…じゃない、つっこむべきはそこじゃない。 何が大丈夫なんだ、ハルヒ。こいつの思考がわかる奴がいたら「機関」とか言う変態組織から表彰されるかもな。 俺だったら、たとえ古泉に土下座されてもいらないが。 「いいんじゃないですか。怪談、僕は嫌いじゃありませんよ。幽霊というものにも少し興味があります。」 少しは躊躇しろ、このニヤケヅラ。 「ふぇ…幽霊…出るんですか、百物語ってなんなんですか…。」 今にも泣きそうな朝比奈さん。大丈夫です、あなたのことは俺が命に代えても守ります。 いつかのクラスメイトによる俺殺害未遂に比べれば幽霊なぞ。 「……」 メンバー中最も幽霊に近い存在のような気がする宇宙人製有機ヒューマノイドインターフェースは、 なにやら不気味な表紙の本を読むのに忙しいようだ。何読んでるんだ? 「……これ」 えーと、いながわじゅん…… !? やる気か、長門。 はあ、何も起きないでくれよ。もしものときは頼むぜ、長門。 ハルヒの場合、幽霊どころかヤマタノオロチを召喚するなんてことは十分あり得るからな…。 というわけで、俺たちは夜の学校に忍び込み、百物語に挑戦しているわけだ。 しかし、5人で100話、一人20話の割り当てだ。正直、俺はそんなに話すネタを持っていない。 どこかで聞いたような、しょうもないネタを披露するといった具合だ。 ある種のオカルトマニアのハルヒと、今まで読んだ本を積み上げると富士山すら凌駕するであろう長門は、 順番が来ると躊躇なく話し始める。長門の話はどちらかというと、都市伝説のような気がするのは、この際目を瞑ろう。 古泉は少し考えた後に無難な怪談を語っている。こいつのことだ、即興で考えた嘘話だろう。 朝比奈さんはというと、専ら悲鳴あげ係である。話せるネタもないようで、ハルヒか長門が代わりに話している。 何なんだこの2人は。 さて、そろそろ納涼百物語大会(命名:ハルヒ)も佳境である。 最後の100話目を俺が話そうとしたところ、ハルヒに権利を奪われた。 曰く、イベントのおいしい所は団長の物なんだそうだ。 俺にとってはおいしいかどころか、不味い役回りだったので有難い。蓼食う虫もびっくりだぜ。 「それじゃあ、最後の怪談、いくわよ。 皆、この1年5組の教室に実しやかに囁かれる噂を知ってるかしら。あの教室はね、いわくつきの教室なの。 あたし達が入学するよりもずっと前、一人の男子生徒の遺体が発見されたの、胸にコンバットナイフを突き刺されて。 特に恨みを買うようにも見えない、ごく普通の男子生徒だったらしいわ。その子が殺される前日、 ラブレターを貰ったと言って浮かれてたという証言もあって、事件との関連性を疑われたけど、遺留品からそんな手紙は見付からず、 結局犯人は分からずじまい。以来、あの教室に一人でいると何か悪いことが起こるらしいわ…。」 ……結末以外はなにやらどこかで聞いたことのあるような話である。こいつ実は全部知ってるんじゃないだろうな。 長門、あまりこっちを見るな。こういう状況でのお前の眼差しはナイフなんかよりよっぽど怖い。 朝比奈さんはもう完全にギブアップ、古泉は相変わらずニコニコしている。 俺と朝比奈さんの青ざめる様子に気付いたのか、ハルヒは満足げな顔で言った。 「あははは、うっそ。今のは完全なあたしの作り話。こうも良い反応をしてくれるとは思わなかったわ。 持つべきものはキョンとみくるちゃんよねえ。」 こいつ実は読心術もマスターしてるんじゃないだろうか。 「じゃあ、消すわよ。」 そういって最後の蝋燭を吹き消した。 …暗闇 朝比奈さんの「ふえぇぇ」という舌足らずな悲鳴が聞こえたかと思った次の瞬間、蛍光灯が瞬き始めた。 誰が点けたんだ。そう思って部室の入り口に目を向ける。俺にとって、ハルヒとは別の意味で生涯忘れないであろう顔がそこにあった。 ……朝倉涼子? 何なんだ?訳がわからない。なんで復活してるんだ?一人を除いて目を丸くして入り口を凝視している。 驚く朝比奈さんも実に愛らしい、写真に撮って起きたい気分だが、今はそれどころではない。 どうでもいいが少しは驚けよ、長門。 「あんた…カナダは?」 ハルヒが訳のわからない質問をしている。 「何のこと?あなた達こんな時間に学校で何してるの?」 それはこっちの台詞だ。何しに出てきた。学校の警備員のバイトでも始めたのか、働き者だな。 瞬間、長門が何か呟いた。よく聞こえなかったが、例の「呪文」って奴だ。同時に明かりが消え、再び点いたときには入り口には誰もいなくなっていた。 なんだ?何をしたんだ、長門? 「何…今の?」 ハルヒが驚き半分、興味半分の器用な顔で声をあげる。あれはいったい何なのか、それは俺が知りたい。 朝比奈さんはもはや放心状態、古泉は胡散臭い笑顔に戻っている。 長門は勿論表情を変えていないが、一言 「……幻覚」 とだけ言った。いくらハルヒをごまかすためとはいえ、それはないだろ長門。 「幻覚…?みんなも見たでしょ?」 「…見ていない」 長門が無茶な否定を始めたが、他にどうしようもないので俺も続いて首を横に振った。 「ん~、おっかしいなあ。確かにそこに朝倉涼子が……まあいいわ。考えてもわかんないし。今日はそれなりに面白かったし。 終わりにしましょ。」 こんなフェルマーの最終定理の証明よりも意味のわからない説明で納得してくれるんですか、ハルヒさん。 お前が、大雑把な奴で良かったよ。 帰りの道中、俺は長門へ説明を求めた。さすがの俺もあれでは納得がいかない。古泉も興味があるようで、 話に勝手にまざってきた。あっちでハルヒの話し相手でもしてろよ。 「残念ながら、涼宮さんは朝比奈さんと話すのに忙しいようですのでね。」 見ると、ハルヒが朝比奈さんへまだ怪談を語っている。もう、いつでも失神する準備万端な朝比奈さんは 半分ハルヒに引っ張られて歩いている。すみません…朝比奈さん。 「…ノイズ」 長門がいきなり蚊の鳴くような声で説明を始めた。 例によってさっぱり意味がわからなかったが、古泉によるとこういうことらしい。 長門は朝倉涼子の情報連結を解除したが、それは朝倉涼子のデフォルトの状態を消去したのであって、 朝倉涼子が長門のあずかり知らない所で得た経験値までは対象となっていなかったらしい。 つまり、1年5組委員長としての朝倉涼子の情報はいまだ学校を彷徨っていて、ハルヒの願いに呼応して現れ、 今さっき長門が、消去したというわけだ。 なあ、それって所謂幽霊じゃないか? 「…そう、通俗的な用語を使用するならば、そういうことになる。」 …笑えない、何故か笑っている古泉の顔をひっぱたきたい気分だぜ。 「遠慮しておきましょう。僕にそういう趣味はありませんから。あ、そうそう、もう電車もないでしょうから帰りのタクシー代は 僕が出しますよ。面白いものを見せてもらったお礼です。」 なにやら、どこかで見たことのあるタクシーを呼び止めて古泉は言った。 「さすが副団長ね。キョンにも見習って欲しいわ。」 真夜中なのにこいつの元気は底なしだな…。朝比奈さんはハルヒを自分の家に招待しようと必至に懇願している。 一人で寝るのが怖いんだろう。俺を誘ってくれれば、インチキパワーを発揮した長門の如きすばやい動きで挙手をして、 二つ返事で引き受けるというのに。 さて、俺も今日はもう眠い。少しばかり癪だが、古泉の好意に甘えてとっとと家に帰って寝よう…電気を点けて。 END
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金 は人類の発展の中で生み出された素晴らしいシステムである。 このシステムがあって現代社会は成り立っているのだといっても過言ではない。 しかし、長所ばかりではない。 金に価値がありすぎるために金を巡っての争いが起きたり、 金をあまり持たない者が社会的に弱い立場になったりする。 今の日本には、物々交換していたころの人々のような暖かみが必要だろう、とたまに思ったりする。 さて、かくいう俺も金の無い高校生のひとりだ。しかし、今、俺は金が必要だ。 金が無い高校生が金を稼ぐためにすることといえば、そう―― 「バイト・・・ですか?」 部専用の癒し系メイドさんがきょとんとした顔で答えた。 「そうです。朝比奈さん、なにかいいバイトご存知ありませんか?」 「知りませんね・・・。すいません。私バイトしないので。 でもどうしてお金が必要なんですか?」 そうだな。うるさい団長様もまだ来てないことだし、今の内に話しておくか。 「長門と古泉も聞いてくれ。実はだな。」 俺は自分の計画していることを他の3人に話した。 「あー。そっかー。そうですよね。そっかー・・・。」 朝比奈さんは納得したように手を叩いた。 一方、長門は何一つリアクションする事なく、黙々と読書を続けている。聞いてたのか? 「聞いていた。」 そうか。ならいいんだが。何かリアクションがないと聞いてないのかと勘違いしてしまう。 「それはまた、面白そうな話ですね。でもやるなら涼宮さんにバレないようにしないと。 バレたら色々と面倒そうです。」 古泉がニヤケ顔で言う。面倒になるから、ハルヒがいない時にこの話をしたんだよ。 「それで、資金は誰が出すのですか?なんなら 機関 の方で用意させてもらっても結構ですが?」 それじゃあ意味が無いだろう。何の為にやると思っているんだ?資金は俺達で出すに決まっているだろう。 「冗談です。そんな本気な顔しないでください。」 古泉はニヤケ顔を崩さず小さく手を振る。 お前の冗談は冗談に聞こえない。それに笑えないぞ、古泉。 「すみません。僕にギャグセンスは無いもので。 でも、あなたがクリスマスにやったあれよりは良いと思いますがね。」 やめろ!あの時の話はするな!思い出したくない。1秒たりとも思い出したくないぞアレは。 「キョンくん、それだと私もお金が足りないんですけど・・・。」 俺が古泉を睨んでいると、横で朝比奈さんが言った。 俺は顔を朝比奈さん専用スマイルに切り替えて応対する。 「それだったら、朝比奈さんも一緒にバイトを探しましょう。」 「僕も一緒にいいですか?」 古泉が割り込んでくる。 「お前にはもうバイトがあるだろう。赤い玉になってぴゅんぴゅん飛んでりゃいいじゃないか。」 「閉鎖空間も随分ご無沙汰でしてね。仕事が来ないんじゃ稼ぎようもありませんよ。」 古泉は肩をすくめてみせた。俺がその怪しい古泉の動きをじっと見つめていると、 「何て、冗談です。僕は充分お金を持っていますよ。」 冗談に聞こえないし、どこから冗談かわからないし、笑えないし、自慢くさいし、憎たらしい。 「おやおや、嫌われたものですね。」 古泉はまた肩をすくめて見せた。お前は1日に何回肩をすくめているんだ。 「そうか・・・あの店だったら雇ってくれそうですね・・・。」 俺がバイト先はそこにしようかと考えていた時、 「ヤッホーー!!遅れてゴッメーン!」 うるさいのが来た。 「ん?何これ?求人情報誌?」 ハルヒが俺が長テーブルに置いていた求人情報誌を手にとる。 「何あんた。バイトなんかするの?」 「しねぇよ。それは古泉のだ。」 と、嘘をついておく。古泉は一瞬驚いたような顔をしたが、 「ええ、ちょっと高校生らしくバイトでもしてみようか、と持ってきたのですが、 見たところ僕向きなバイトは無いようです。 やっぱり僕は部室でボードゲームをしてる方が気楽でいいですよ。」 と、冷静に対応した。ちっ、もうちょっと困れよ。 「ふーん。」 ハルヒは求人情報誌を古泉に渡し、またいつもと同じ場所に座った。 「王手。」 「お手上げです。」 今日もまたいつもと同じSOS団の風景だ。 俺と古泉は、古泉のボロ負けの将棋を楽しみ、 朝比奈さんは編み物、長門は読書だ。 我等団長様は、電脳界の不思議探しと銘打って ネットサーフィンをしながらニヤニヤしている。何がそんなに面白いのだろうか。 そして黙々と時間は流れ―。 ぱたん。 本が閉じられる音。これがこの団解散の合図だ。 「今日はみんなで一緒に帰りましょ!」 ハルヒが元気ハツラツな顔で言う。 「悪いハルヒ。俺と朝比奈さんはこれから少し用事があるんだ。」 そういうと、ハルヒは元気ハツラツな顔を解き、口をへの字にして、 「何よぉ、つれないわね。まぁいいわ。有希、一緒に帰りましょう!」 「そう」 古泉を忘れているぞ、ハルヒ。 ハルヒ、長門、古泉と別れ、俺は朝比奈さんと肩を並べて大森電気店に向かった。 「やぁ、いらっしゃい。今日はどうしたんだい?」 店につくと、店主さんが愛想のいい笑顔で話しかけてきた。 「いやぁ、今日は少し、お願いがありまして。」 俺は店主さんに事情を説明した。 「そういうことかい。丁度、お手伝いさんが欲しいと思っていたところなんだよ。 うちでいいなら、よろしく頼むよ。」 「本当ですか!?」 朝比奈さんと俺は同時に言った。 「ああ。ところで、土日はいいとして、平日はどうするんだい?」 「早めにお金を貯めたいので、俺は平日も学校が終わったら来ることにします。」 「お嬢ちゃんは?」 「えーっと・・・。キョンくんがそうするならわたしもそうしようかな。」 「わかった。準備しておくね。じゃあ、今日は帰って明日また来なさい。」 「はい。ありがとうございました。」 俺と朝比奈さんは、声を合わせてお辞儀をし、その場をあとにした。 次の日。 「キョン、今日も来なさいよ。」 「何処にだ。」 「決まってるじゃない。SOS団部室よ。」 わかっている、と言いかけて俺は口を止めた。そうだ、今日からバイトだ。 「すまんなハルヒ。俺はしばらく顔を出せないと思う。」 「えっ?どうして?」 「バイトがあるんだ。」 俺がそう言うと、徐々にハルヒの眉が吊り上がっていった。 「なーに言ってるのキョン!!バイトなんかよりSOS団を優先させなさいよ、SOS団を!」 「この間の不思議探索パトロールのときのおごりで、俺の所持金が底をついてしまったんだよ。 俺も苦労してるのさ。」 「何が苦労よ!!そもそもあんたが集合時間に遅れなきゃいいんじゃない!!」 ハルヒは立ち上がって言った。眉がますます吊り上がる。 「俺は他の団員のために自らおごりを引き受けているのさ。」 「下手な嘘つくんじゃないの!どーせ毎日寝坊してるだけでしょう?」 「それに、あんたが来なけりゃ・・・!!」 ハルヒはそこまで言うと、口を開けたまま静止した。どうした? 「・・・いや、何でもない。」 ハルヒはそう言うと、黙って席に着いた。なんだってんだ? そんなことをしていると、担任の岡部が教室に入ってきた。 「よーし。ホームルーム始めるぞ。」 そして放課後。 ハルヒと別れを告げて、俺は学校を出た。 校門まで行くと、朝比奈さんが両手で鞄を持ちながら立っていた。可愛らしい。 「朝比奈さん。」 俺が言うと、朝比奈さんはこちらに気付いたらしく、ぱたぱたと駆け寄ってきた。 「行きましょうか。」 大森電気店につくと、店主さんは丁度大型テレビの入ったダンボールを運んでいるところだった。 「やぁ、来たね。」 店主さんはこちらに気付くと、顔を上げてそう言った。 「こんにちは。」 「はい、こんにちは。じゃあ、まず作業服に着替えてもらうね。」 作業服? 「うん、これ。」 店主さんは服のわき腹の部分を摘まんでぴらぴらさせる。 緑色のこの服、これが大森電化店の作業服らしい。 「奥に用意してるからね。そこで着替えてきて。」 「わかりました。」 電気店の奥のドアを開けると、畳が敷かれている小部屋があった。 ここが店主さんの移住スペースらしい。さらに奥に2階に続く階段がある。 ちゃぶ台の上に、二人分の作業服が置いてあり、その上にメモ書が置いてある。 これに着替えてね だそうだ。 「じゃあ着替えますか。」 「待ってください。」 朝比奈さんはきょとんとする。 「ここで二人で着替えるわけにもいかないでしょう。 俺は少しの間外に出てますから、その間に着替えてください。」 そう言っても朝比奈さんはまだきょとんとしていたが、 10秒ほどして意味が理解できたらしく、顔を赤らめて、 「あっ、そうですよね。着替えるところ見られるのはお互い恥ずかしいですよね。 すいません。それじゃあお先に。」 朝比奈さんになら俺の下着姿を見られても問題ないが。 とかくだらないことを思いつつ、俺は部室の時と同じように一礼して部屋を出た。 「どーぞ。」 朝比奈さんの可愛らしい声を確認し、俺はドアを開けた。 中には、作業服の朝比奈さんがいた。 メイド服の可愛さには劣るものの、これはこれで別の可愛さがある。 まぁ朝比奈さんが着ればどんな服でも可愛く見えるのだが。 「じゃあ、次はキョンくんどうぞ・・・。 私は店長さんに仕事を貰ってきますね。」 そう言うと朝比奈さんは部屋を出てぱたぱた走っていった。 さて、着替えるか。 初めての電化店での仕事は意外にも、かなりしんどいものだった。 主な仕事は大型の電化製品を運ぶことで、 その他には店の商品に値札をつけたり、商品の確認、などなど。 電気店の仕事がこんなにきついものだったとは。 バイトの終了時刻は夜9時。 その頃になると、俺も朝比奈さんもへろへろになっていた。 「お疲れさん、今日の給料だよ。」 給料が入った封筒が手渡される。 今日は帰ったらすぐ寝よう。 今日もまたあのしんどい上り坂をのぼり、登校。いやになるね。坂にエスカレーターでもつけてくれないものだろうか。 教室に入るや否や、ハルヒが大声で言ってきた。 「キョン!あんたが働いているところ何処?」 「大森電気店」 俺は鞄を机に置きながら答えた。 「えっ、そうなの?」 ハルヒは意外そうな顔をする。 「どうしてだ?」 「いや、みくるちゃんも急にバイト始めるとか言い出して、 ひょっとしてあんたたち同じところに働いてるんじゃないかって思ってたんだけど。」 思ってたんだけど・・・?俺達は同じところに働いているはずだ。 でもハルヒがそう言っているってことは・・・。 「朝比奈さんは何処で働いているって言っていた?」 「近所の喫茶店だって。」 「へぇ。」 喫茶店?何故嘘をついているんだ、朝比奈さんは。 とりあえず、朝比奈さんにも何か理由があるのだろうから、ハルヒに本当のことを言うのはやめておいた。 今日は日曜日。不思議探索パトロールの日だが、俺と朝比奈さんは欠席することになった。 「おはようございます。」 俺が電気店に着いた時、朝比奈さんはもう作業服に着替え、作業を始めていた。 真面目だな、この人は。これでドジがなければどれだけ有能な店員だろうか。 「彼女は真面目で助かるよ。」 と、店主さんが笑いながら小声で言った。 「ところで朝比奈さん。」 「何です、キョンくん。」 「あなた、ハルヒにバイト先嘘教えてましたね。何故です。」 俺がそういうと朝比奈さんはビクッとした。何故驚く。 「だって、私とキョンくんが一緒に働いてることを涼宮さんがしったら、 また涼宮さん モゴモゴ・・・」 なんかモゴモゴ言っているが、何をいっているのか分からない。 まぁいいか。 日曜日なだけに、平日よりも客の数が多い。 それに合わせて俺達の仕事量も増える。日曜日だから時間も長いし。 ふと時計を見ると、もう正午になっていた。あと半日、頑張れ俺。 「キョンくぅぅーん。これ、重くて持てないんですけどー。」 店の奥から朝比奈さんの声が聞こえてきた。はいはい、ただいま。 見ると、そこにはいつも持っているののテレビの段ボール2倍ぐらいのサイズの段ボールがあった。 段ボールの中身は冷蔵庫らしく、とても一人じゃ持てないだろう。 「俺はこっち側持ちます。朝比奈さんはそっち側持ってください。」 「あ、はい。」 俺と朝比奈さんは、合図と共に、同時に段ボールを持ち上げた。 段ボールを縦じゃなく、横に持った方が効率が良いというのは後で気付いたことだった。 俺と朝比奈さんは、段ボールを持ったまま店先にでる。 どすん。 「っと。これでよし。」 「ありがとうございました、キョンくん。助かりました。」 朝比奈さんが俺に向かって微笑む。 いえいえ、お礼なんていりません。あなたのその微笑みだけで充分です。 むしろお釣りがくるぐらいです。 ふと、フフフ、と微笑む朝比奈さんの背後の人影に気付き、 俺はぎょっとした。 無表情少女とニヤケ顔青年に挟まれた団長様が、そこにいるではないか。 「どういうこと?」 俺と目があうなり、ハルヒはそう言った。 「どういうことって、バイトだって言っただろう。」 「そんなことじゃないのよ。」 ハルヒの声がいつもより少しだけ冷たい気がしたのは気のせいじゃないだろう。 「みくるちゃん。」 ハルヒは朝比奈さんをじろりと睨む。朝比奈さんはハルヒの視線に身体をビクッとさせる。 「あなた、喫茶店に働いてるって言ったわよね。」 「言いました・・・。」 何だ何だこの険悪ムードは。ハルヒ、朝比奈さんを睨むんじゃない。 「キョン。なんであんたみくるちゃんと同じとこでバイトしてるって言わなかったの?」 ハルヒは今度は俺をギロリと睨んで言った。 「なんでって言われてもねぇ・・・。」 気付けば、この険悪ムードに圧倒されて、店の周りの客はいなくなっていた。 営業妨害だ、ハルヒ。 「帰るわ。」 ハルヒは不機嫌そうに踵を返すと、そのままずんずんと歩いていった。 何だってんだ。 バイト先を隠していたのがそんなに気に食わなかったのか? それにしてもそんなに怒る事はないだろう。ったく何考えてるのやら。 「ごめんなさい・・・私のせいです・・・。」 朝比奈さんが涙目で言った。何故朝比奈さんが謝る必要があるんですか。 「だって私が・・・・・・涼宮さんを騙そうと・・・」 朝比奈さんはそのまま俯いたまま、しばらく硬直し、 顔を上げると、何が起こったか把握できていない店主さんのところに駆け寄っていって言った。 「すみません・・・。突然ですみませんが私、今日でやめます。」 次の日、ハルヒはまだ不機嫌オーラを漂わせていた。 「今日もバイトがあるから。」 俺がそういうと、ハルヒは窓の外から視線を外さず言った。 「あっそ。みくるちゃんと頑張ってね。」 何なんだ、一体。とりあえず朝比奈さんの事を伝えるとするか。 「そうそうハルヒ。朝比奈さん昨日でバイトやめたから。」 そう言うと、ハルヒは少しだけ目を見開き、俺を見て、 すぐにまた元の不機嫌な表情に戻って窓の外に目をやった。 「そう。」 偶然にも帰りの廊下で朝比奈さんに会った。 聞いたところによると、今度こそ本当に近所の喫茶店でバイトをするらしい。 コーヒーをひっくりかえさないか不安だが。 そんな事を思いつつ、今日もまた大森電気店に向かう。 朝比奈さんと一緒じゃないと、仕事にやる気が出ない。 しかし、最近頭の中はバイトのことばっかりだ。バイト中毒か? 目的のために頑張らなくてはならないからな。うん、頑張れ俺。 バイトを続けてる間にあっという間に金曜日になってしまった。 もうバイトも慣れてきた頃だ。 さて、と。バイトいきますか、バイト。 と、自転車で坂を下っていると、見覚えのあるふわふわした髪の少女が目に入った。 「朝比奈さん!」 俺は自転車のブレーキをかけ、朝比奈さんの近くに停車する。 「あ、キョンくん。」 朝比奈さんは、もうすっかりハルヒに怒鳴られた時のブルーモードを脱したようだ。 一方のハルヒはまだ不機嫌オーラをムンムンさせているのだが。 「一緒に帰りましょう。鞄、持ちますよ。」 俺は朝比奈さんの鞄を受け取ると、空いている自転車の前かごの中に入れた。 「どうです、喫茶店の方は?」 「いやぁ、私のドジで店の人に迷惑をかけっぱなしです。」 朝比奈さんは右手を握り拳にし、自分の頭をコツンと叩いて、舌を出した。可愛い。 しかし、 ドジ ねぇ・・・。 俺の頭の中にコーヒーの入ったお盆をひっくり返して涙目の朝比奈さんの姿が浮かんだ。 そもそもハルヒが「みくるちゃんをドジっ娘にする!」 とか言い出さなければ朝比奈さんがこんなにドジをすることはなかっただろう。 「全く、ハルヒは朝比奈さんに迷惑かけてばっかりですね。」 「いえいえ、気にしてませんよ。」 朝比奈さんは微笑む。 「いえ、あんなのには一発ガツンと言ってやればいいんです。 『迷惑だ!』ってね。そうすればハルヒも少しはおとなしくな――」 「仲いいわね、二人とも。何の話かしら?」 突然発せられた声は朝比奈さんの声ではない。振り返ると、その声の主が立っていた。 「ハ・・・ハルヒ・・・」 「私が迷惑だって?」 ハルヒがいつものように眉を吊り上げる。声が微妙に震えてる気がしたのは気のせいだろう。 「いや、冗談だ、すまん。本気にするなよ。」 「ふーん。」 朝比奈さんは、ハルヒの姿を見るなり黙り込んでしまった。 「ハルヒ、今日SOS団は?」 「休んだわ。ノリ気じゃなかったのよ。 それで、帰るついでにキョンに荷物持ちでもさせようと思ってたけど・・・。」 ハルヒは自転車の前カゴをちらりと見る。 「先客がいるみたいね。」 そう言うと、ハルヒは俺をキッと睨みつけ、坂を駆け下りていった。 何だってんだ。最近機嫌が悪いな、あいつ。 横を見ると、朝比奈さんがまたブルーモードに突入していた。 俺はブルーモードの朝比奈さんを喫茶店まで送りとどけ、 また大森電化店に向かった。 足が痛い。筋肉痛だ。 「やぁ、また来たのかい、キョンくん。大丈夫かい?働きすぎじゃないかい?」 「いえいえ、大丈夫です。高校生の体力を甘く見ないで下さいよ」 俺は強がって見せたが、本音を言うと疲れていた。 しかし、 あの日 まで時間が無いんだ。弱音など言ってられない。 「さて、まずは何をすればいいですか?」 「じゃあ、そのテレビを運んでくれ。」 日が落ちてきた。バイト終了まであと30分だ。 「この段ボールも運ばなくちゃな。」 段ボールの取っ手を掴む。む?力が入らない。 疲れすぎか。ふぅ。 俺は一息置いて、今度は腰に力を入れてそれを持ち上げた。 これを店先に・・・っと。ん? やけに足元がふらふらとする。思わず手を離してしまった。 何だこれは?重力の感覚がおかしい。 上に引っ張られているような、身体が逆さになっているような。 あれ?視界が・・・ぼやけ・・・て・・・・・・。 目を開けると、そこには白い天井が広がっていた。 「お目覚めですか?」 横を見ると、古泉がナイフで林檎の皮を剥いている。 「あなたの看病をするのも2度目ですね」 看病?というとここは・・・。 上体を起こしてみる。病室だ。左手には点滴の針が刺されている。 「どうして俺はここにいる?」 「覚えていないのですか?あなた、バイト中に倒れたそうですよ。」 バイト中・・・。ああ、そうか。段ボールを運んでいる時にいきなり視界が真っ暗になったんだ。 古泉はしゃりしゃりと黙々と林檎を剥いている。 「ハルヒは?」 俺は無意識に聞いていた。 「涼宮さんですか・・・。一緒に見舞いに行こうと言ったのですが、行かないと。 説得したんですがね。どうしても行かないと聞かなくてですね・・・。 何やら様子が変でした。それで仕方無しに僕だけで来たんですよ。」 古泉は林檎を剥き終わると、それを一口サイズに切り、皿にのせる。 「長門と朝比奈さんは?」 「今頃彼女を説得していると思います。」 古泉はおもむろに紙袋からもう一つ林檎を取り出す。もういらねぇよ。 古泉が、3個目の林檎を剥きおわる頃、廊下からコツコツと足音が聞こえてきた。 遅れて、誰かが喚く声も。 「・・・と・・・ちゃん・・・・・・ないって・・・・・・。」 ハルヒ?次第に足音と共に声が大きくなってくる。 「行きた・・・ない・・・言って・・・しょう?」 ハルヒだ。 「有希!!離して!!行きたくないのよ、キョンのところなんか。」 ハッキリ聞こえるぐらいの距離になってきた。 「離しなさい!!あの馬鹿キョンなんかほっとけば――」 「あなたは勘違いをしている。」 声がドア前ぐらいにきたところで、長門がハルヒの声を遮るように言った。 「何をよ。」 不機嫌な声なハルヒ。 「彼のこと。」 「キョンのこと?」 「そう。」 俺の事? 「どういうことよ。」 「彼がバイトをしていた理由。」 長門は淡々とした口調で言う。 「え・・・?」 「知ってる?」 「オゴリで金欠なんでしょ。そう言ってたわ。」 「違う。」 「・・・?・・・違うって?」 ハルヒはきょとんとした声で言う。 まさか、おい、長門。 「彼はあなたの誕生日プレゼントを買う為に働いていた。」 バラしやがった。俺の苦労が水の泡だ、バブル崩壊だ。 …。 沈黙が流れる。ハルヒは押し黙ってしまったようだ。 つられてこちらも黙ってしまう。 1分ほどたって、ハルヒが口を開いた。 「ちょっと1人にさせて。」 足音が、来た方向とは今度は逆の方向に響いていった。 それから10秒ほどして、がちゃり、と音をたて、静かに病室のドアが開いた。 長門と、付き添うように朝比奈さんが立っている。 長門は俺を見て、首を1ミクロンだけ下に動かし、部屋を出て行った。 なんだってんだ? 「じゃあ僕もそろそろ帰ります。林檎、食べてくださいね。」 古泉はニコリと微笑み、たたんでいたブレザーを羽織って、一礼して出て行った。 それから30分ぐらいたっただろう。 コンコン。 ドアがノックされた。 「どうぞ。」 がちゃり、と音を立て、ドアが開き、ハルヒがゆっくりと入ってきた。 「お前がノックして入ってくるなんて珍しいじゃないか。」 俺は笑って言う。 ハルヒは俯き気味だ。聞いているのか? 「聞いてるわよ。」 小さく言った。 ハルヒはとぼとぼとした足取りで俺の横まで来ると、古泉が座っていた椅子にすとん、と腰掛けた。 しばらく沈黙が続いた。 「林檎剥くわ。」 ハルヒはいきなりそういって、古泉が残していったナイフと林檎を手にとる。 林檎なら古泉が山のように剥いていってくれたが、まぁあえて言わないでおこう。 しゃりしゃりという音だけが病室に響く。 「痛っ!」 突然小さくあげられた悲鳴はハルヒのものだった。見ると、ひとさし指からじんわりと血が出ている。 「あー。何やってんだ。」 俺はハルヒの手をとり、ティッシュで血を拭いてやると、新しいティッシュで傷口を縛ってやった。 「あ、ありがと・・・。」 ハルヒはぎこちなく礼を言う。 俺はハルヒが剥きかけの林檎とナイフを手に取り、残りの皮を剥いてやった。 「・・・・・・あんた意外に器用ね。」 「林檎の皮剥きだけは得意だ。」 ハルヒはそのまま、傷口に巻かれたティッシュをじっと眺めていた。 「どうした、元気ないじゃないか。」 俺がそう言うと、ハルヒはしばらく黙り込んだあと言った。 「有希から聞いたわ。」 「聞こえてた。」 またしばらく黙り込む。こんなにおとなしいハルヒは珍しい。 「バイトで倒れたんですってね。」 「ああ、ちょっとクラッてきてな。情け無いぜ。」 「そんなに頑張っていたの?」 「まぁ俺なりには頑張った方だと思うが。」 「みくるちゃんがバイトしてたのも?」 今更隠す必要もないので本当のことを言ってやった。 「ああ、お前のプレゼントを買うために金を貯めてたのさ。」 「・・・・・・。」 再び沈黙が続く。今日は沈黙デーなのだろうか。 「キョン。」 少しだけ大きな声で言った。そして今度は小さく弱々しい声で、 「ごめんね・・・。」 ・・・・・・。 「ごめん、本当にごめんキョン。私、何も知らないで勘違いして。 皆の気持ちも知らないで・・・。ごめん。許して。」 ハルヒは俯き気味で言った。 ……こんなに弱々しいハルヒも可愛いな。しかし―― 「やっぱりお前は笑顔が似合う。」 俺が言うと、ハルヒは何の事を言われているのかわからなかったらしく、 ぽかんと口を開けた。 「ハルヒ。許してくれもなにも、俺は最初から怒っちゃいねぇさ。 多分朝比奈さんもな。だからもう気にするな。 いつものような笑顔を見せてくれ。」 俺がそういうと、ハルヒは少しだけ目を見開いた。 そして、両目を右手で覆って、小さな声で言った。 「ありがとう・・・。」 ハルヒはそのまますくっと立ち上がると、 病室のドアの辺りまで歩いていき、立ち止まって振り向かずにもう一度言った。 「ありがとう・・・・・・キョン・・・。」 そしてハルヒはそのまま病室を出て行った。 ドアの足元に2,3滴の大粒の雫が落ちていた。 がちゃり。 きた!! パァァァァァン!! 「誕生日おめでとーーう!!」 突然のクラッカー攻撃に、流石のハルヒも驚いたらしく目を見開き、口をぽかんと開いた。 よし、いいぞその表情。俺は手元に控えていたデジタルカメラで、その間の抜けた顔を撮ってやった。 部室の窓にはクリスマスの時のように、スプレーで ハルヒ 誕生日おめでとう と書かれている。 ただし、今回これを書いたのは俺だけどな。 「どうぞ、こちらへ。」 古泉はハルヒを団長席に案内する。 「ありがと、古泉くん。」 ハルヒはいつものように団長席に座り、斜め上方向に人さし指を突き刺して言い放った。 「さぁ、あんた達!!私を祝いなさーい!!」 なんだそのふてぶてしさは、と思いつつ、だが、これがハルヒらしいな、とも思っていた。 クリスマスのときと同じく、今日も鍋を持ってきた。 今回は俺特製鍋だ。学校で鍋を作ったりすると生徒会の方がうるさいが、 こんな日ぐらい騒いでもばちはあたらないだろう。 それで、食事風景だが、長門は毎度のごとく力士のようにもりもり食べ、 朝比奈さんは、ちまちま少しづつ肉をちぎりながら可愛らしく食べており、 古泉は何か横でべらべらと鍋に関するうんちくを並べていたが、ぶっちゃけ聞いていなかった。 ハルヒはというと、肉と野菜の位置がどうこうだとか、具がどうこうだとか、 俺の鍋に色々と文句をつけつつ長門に負けないぐらいのスピードで肉を頬張っていた。 俺が自分がほとんど食べていない事に気付いたのは具が全部無くなった時になってのことだが、まぁいいだろう。 「それでは、涼宮さんへのプレゼントタイムとしましょう。」 司会っぽく言うが、お前を司会にした覚えは無いぞ、古泉。 勝手に仕切るな。とか思いつつ、俺達はプレゼントタイムに入った。 最初にプレゼントを渡したのは長門だった。 綺麗な包装がされており、ハルヒが開けてみると、中には 何やらカタカナがやけに多いタイトルのハードカバーが入っていた。 SF学園モノ、だそうだ。どういうジャンルだ? 長門はハルヒに無言でプレゼントを渡すと、またいつものように本を取って 窓辺のパイプイスに座って読書を始めた。 こんな時ぐらい読書はやめようぜ、長門。 次にプレゼントを渡したのは朝比奈さん。 紙袋の中から取り出したのは、少し大きめのテディベアだった。 テディベアはどっちかというと、ハルヒより朝比奈さんが持ってるほうが似合うが、 まぁハルヒも喜んでいるのでそれは言わないでおこう。 「僕からはこれです。」 といって古泉が取り出したのは小さな箱だ。なんだこれ? 「フフフ、まぁ見ててくださいよ。」 古泉がその箱をパカッと開けると、オルゴールが流れ始めた。 ん・・・?この曲は、ハルヒが文化祭でやったENOZの曲じゃないか。 「そうです。僕の知り合いに作ってもらいました。」 「すごいじゃない!ありがとう古泉くん。」 ハルヒはオリジナルのオルゴールに感激していた。 「じゃあ次は俺のプレゼン――」 そこまで言った時、俺はとんでもない光景を目にした。 なんと、長門が本を窓の外に向かって投げているじゃないか。 長門はすくっと立ち上がると、ハルヒの背中をちょんちょんとつついて言った。 「風で本が飛ばされた。拾ってくる。」 ハルヒは不思議そうな顔をする。 「いや、長門、お前今自分で――」 と言ったところで、突然俺の唇が動かせなくなった。アリかよ!反則だ! 長門がすたすたと部室を出て行くと、ようやく俺は長門の呪縛から開放された。 「あ、お水が切れてる・・・。汲んできますね。」 そう言って今度は朝比奈さんが出て行った。 「じゃあ、僕はトイレにでも、ね。行ってきますよ。」 古泉はニヤケ面でドアのところまで行き、俺に小さくウインクをして出て行った。寒気がしたね。 二人だけになっちまった。 「・・・それじゃあ、次はあんたのプレゼントを発表しなさい!」 ハルヒは何故三人が出てってのかということをつっこむ事無く、そう言った。 「ほらよっ。」 俺はバッグに入れていたそれを、ハルヒに投げてやった。 小さい箱はちゃんと包装してある。 「ちょっと、もうちょっと丁寧に渡しなさいよ。」 「悪い。」 ハルヒは口をへの字にして、箱の紐を解き始めた。 そこに入っていたのは・・・。 「これ?」 ハルヒはそれを摘まんで、ぶら下げて見た。 黄色いリボンだ。 言っておくが、そこらで売ってる安いリボンではない。 高級リボンだ。派手すぎず、地味すぎず、さりげない加工が随所にちりばめてあり、 布も高級な物を使用している。見た目よりも驚くほど高ぇんだぞ、それ。 「ふーん。あんたセンスないわね。」 なんて事を言うんだ。 「冗談よ。素敵じゃない。」 ハルヒは、今してるリボンを解いて、俺がたった今プレゼントしたそれを結び始めた。 「どう?」 髪にリボンを結び終わったハルヒは得意気に言う。 「いいじゃないか。」 普段のハルヒより輝いて見えるのは気のせいではないだろう。 「仕方が無いわね。」 何が仕方ないんだ。俺は何も言って無いぞ。 という俺の言葉を無視し、ハルヒは結んだリボンを解き始めた。 そして、 「今日はサービスよ。」 とニヤリと微笑むと、今度はリボンを頭の後ろ側で結び始めた。 ハルヒがそれを結び終わった時に、俺はハルヒが何をしようとしていたのか理解した。 「ポニーテールか。」 「そ。・・・その、好きなんでしょ?」 「ああ。」 ハルヒの頭の後ろのしっぽのところがぴょこんと動く。 それを見て、俺は思わず笑みを浮かべてしまった。 「ハルヒ。」 「何?」 俺はいつかの日のように言ってやった。 「似合ってるぞ。」 fin